東京・浅草や秋葉原に程近い台東区柳橋で行なったリノベーションホテルプロジェクト。鞄の製造や卸売業を行う林五が間もなく創業130周年を迎えるにあたり、会社移転事業と共に企画された。5階建ての建物の1階には、ホテルレセプションに加えて食パン専門店「浅草 青-AO」と、宿泊客の朝食も提供するカフェバーを配置。ホテルとして構えるのではなく、地域の人達にも開かれた場所となることを意図している。2〜4階は客室フロアとし、1階から連続する吹き抜けが都市部らしい適度なざわめきを伝え、ドミトリー特有の閉塞感を軽減する。5階には檜風呂やシャワールームを設置。寝るためだけの最低限な空間ではなく、ゆっくりとくつろげるような設えとした。ファサードから一階内部まで続く照明は、近隣地域の象徴である浅草寺、仲見世通りに並ぶ球型の照明器具を断片的に抽出。和に傾きすぎないプレーンな空間に落とし込むことで、近代的でありながら歴史や伝統、地域への尊敬を大切にする現代の東京を空間全体で表現している。同様に、仕上げとして採用した藍色のタイルが、間接的に日本らしさをイメージさせる。宿泊客はもちろん、地域の人にも認知され、愛される場を目指した。